トラウマ(複雑性PTSD)の補助治療としてのヨガ:米国の最新研究の紹介②

「トラウマ(PTSD)の補助治療としてのヨガ:米国の最新研究の紹介」では、米国トラウマセンターにおける複雑性PTSDの女性に対する「10週間のトラウマに配慮したヨガの実践」の効果による最新研究(2014年)を紹介しました。

今回は、その研究の続編として同研究所において実施された、ヨガの実践期間を20週に増やした場合の効果についての研究(2017年)を紹介します。

*(原文記事)Bessel van der Kolk and et al. Effectiveness of an Extended Yoga Treatment for women with chronic post traumatic stress disorder. Journal of alternative and complement medicine2017;23;300-309.

慢性的なPTSDの女性に対する長期的なヨガ治療の効果についての研究

◎研究の背景
ヨガは、様々なトラウマを経験した人に対する効果的なPTSDの治療であるということが分かってきており、それは慢性的なPTSDを持つ女性も含まれる。

この研究では、より長期的な(20週間)トラウマに配慮したヨガ治療の効果を研究した。より短い期間(週1回×1時間のクラス×10週間)で、家での実践も含まない2014年の先行研究(慢性的なPTSDの女性に対する10週間の治療に関するランダム化比較試験)の研究結果を最適化することを目指す。

◎方法
慢性的な治療効果のあがらないPTSDの女性に対する20週のトラウマに配慮したヨガ治療の実証研究を行った(ランダム化されていない単一グループ9名に対するもの)。
対象者は、週1回のクラス(1時間×20週)に加え、モニター付の週3回の自宅実践(30分/回、DVDまたはCDにて)のホームワークを割り当てられた。研究アシスタントは、週1回、各参加者に対して電話でホームワークのリマインドをし、各参加者はクラス毎にホームワークの実践記録を提出するよう求められた。
期間中、複数回にわたり、PTSDと解離症状の軽減効果を測定した。

◎結果
PTSD・鬱・解離症状の軽減効果は、より短期(10週間)の治療よりも、より大きくなった。
参加者の83%がPTSD診断基準に適合しなくなり、51%の症状減少が現れたこれは、10週間の先行研究での52%の非適合、33%の症状減少に比較して大幅な増加となった。
更に、解離症状の改善にも有意な効果が現れた。
治療の終了後も症状の改善が続いた。

◎結論
治療期間をより長くした、モニター付の自宅実践も組み合わせた”より集中的なトラウマに配慮したヨガ治療”は、深刻な慢性的なPTSDの個人に対してより効果的である可能性がある。

編集後記:私にとってのトラウマ治療

2014年の初の査読付研究論文に続く、より長期の集中的なヨガ実践に関する研究を紹介しました。ヨガの実践者にとってみれば当然の結果ですが、それを科学的に実証しようとする試みに敬意を表したいです。

私は、本格的なトラウマ治療を初めて1年経った頃、心理療法だけでの治療に限界を感じて、身体からアプローチするヨガの可能性を探り始めました。当時の私は、PTSDの主要3症状のうちの1つの「過覚醒」に該当する症状(不眠、身体の緊張や痛み、慢性疲労、不安・恐れ・イライラ・怒りの爆発等感情的な過敏さ)が改善せず、生活の質を著しく下げていました。そして、ボストンのトラウマセンターで実践されている「トラウマ治療としてのヨガ」の存在を知り、それを意図して、ヨガの実践を始めたのは2014年2月でした。(詳しくは、プロフィールを参照

日本でトラウマ治療としてのヨガの実践ができる一般クラスを見つけることはできませんでしたが(未だに知りません)、知り合いの縁で私が安心して通えるこのエッセンスに近いクラスに幸運にも出会うことができました。それが、クリパルヨガでした。

私の場合は、基本的に週に1回のグループクラス(80分)と、自宅での毎日のヨガ実践を組み合わせました。家での実践は、クラスに通う前から続けていましたが、これは、身体の痛みや不快感が酷かったので、少しでも楽になるために、少しでも楽に眠れるために必死だったからです。しかし、自己流の自宅実践のみでの限界を感じて、本格的に取り組めるクラスを探したという経緯があります。

また、毎週の心理カウンセリングでの面談(60分)も継続していましたし、自助グループや弁証法的行動療法も併行して実践していました。身体のレベルで新しい体験を蓄積しながら、カウンセリングでそれを振り返ったり統合したりする機会になりました。

今振り返ると、マインドフルなヨガとカウンセリングをそれぞれ利用することで、フェニックス・ライジング・ヨガセラピーのセッションのような機能を獲得していたと確信しています。(フェニックス・ライジング・ヨガセラピーでは、身体の体験であるマインドフルネスなヨガと、その体験を対話で振り返る統合の2つのパートで構成されています)

定期的なヨガのクラスでの実践をはじめて、身体の緊張が徐々にほどけていくことで心も楽になり、過覚醒の症状が改善して、生活の質が上がっていきました。そして、1年くらいたったところ大きなブレークスルーが起こりました。そして、その半年後には、ヨガ教師のトレーニングに参加していました。

私にとってトラウマ治療とは、過去のトラウマを癒しながらも新しい生き方を獲得するために自分を育て直すという大きな作業でした。一朝一夕に簡単に手に入るものではなく、地道な実践を忍耐づよく続けることによってのみ可能だったと感じます。とはいえ、振り返れば、とても充実した幸せな道ですし、いまもその延長上にいます。

ヨガは、単にトラウマの辛い症状を減らすためのツールではなく、自分の内なり資源や力を見いだして、新しい自由で自分らしい生き方を身につけていくためのツールでもあります。

◎回復を信じて、長期的に焦らずに一つ一つ実践していくこと。とにかく、コツコツ継続すること。(自力で努力すること)

◎効果的な方向性に向けて継続するために、信頼できる専門家のサポートを得ること。(他力に委ねること)

これが、私が回復できた理由だったと思います。

どんな困難な問題にも、必ず道はあると信じています。

ヨガを試してみたい人は、ぜひ気軽にご連絡くださいね。

最後まで読んでくれたあなたに「平安の祈り」をお贈りします。感謝を込めて。

神様、私にお与え下さい。
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、
変えられるものを変えていく勇気を、
その2つを見分ける賢さを。

……………

☆トラウマなどの症状からの回復のために、ヨガセラピーの個人セッションやクラスに興味のある方、治療者として興味のある方など、お気軽にご相談・ご連絡ください。

☆記事内容に関する感想や質問などを歓迎します!

……………
◎自分の中から答えを見つける、深く集中したサポート
【フェニックス・ライジング・ヨガセラピー/個人セッション】

ヨガ・マインドフルネス・心理学を融合させた最新のワーク。
米国では、気づきによる自己成長のためのツールとしてだけでなく、トラウマ・鬱・不安などから回復のための補助療法としても利用されています。

*詳細>>

……★☆………………………………
◎トラウマ、アダルトチルドレン、依存症などの生きづらさを持つ人へ
【回復のためのマインドフルネス&ヨガ/個人セッション】

ヨガやマインドフルネスを利用した回復サポートのための個人セッションを行っています。詳しくはお問い合わせ下さい。

*詳細>>

……★☆………………………………
◎日々のセルフケアのためのヨガ・瞑想クラス
【クリパルヨガ、陰ヨガ、マインドフルネス・ヨガ】

トラウマ・鬱・不安などの症状からの回復のためにも利用できます。治療中の方は、予約時にその旨ご相談ください。

*詳細>>

……………

【記事の内容の転載・引用について】
本ページのリンクと抄訳者名(フェニックス・ライジング・ヨガセラピー公認ヨガセラピスト堀桃代)を必ず明記してご利用ください。ご不明点は遠慮なくお問い合わせください。

 

 

 

One thought on “トラウマ(複雑性PTSD)の補助治療としてのヨガ:米国の最新研究の紹介②

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です